
生成AI技術は日々進化を続けており、昨年まで最先端だった知識が今年には基礎知識となる時代です。

生成AIパスポートは、この変化に対応するため毎年2月を基本としてシラバスを改訂しています。2026年2月からの新シラバスでは、最新のAIモデルやRAG技術、AIエージェント、さらには2025年6月に公布されたAI新法まで、実務で求められる最新知識が大幅に追加されました。
この記事では、改訂のポイントから各章の詳細な出題範囲、効果的な学習方法まで、合格に必要な情報をすべてお届けします。
生成AIパスポートとは何か

生成AIパスポートは、一般社団法人生成AI活用普及協会が運営する、生成AIリスクを予防するための日本最大級の資格試験です。
この資格は、生成AIに関する基礎知識や最新動向、活用方法に加えて、情報漏洩や権利侵害などのリスクまで網羅的に学べる点が特徴となっています。
試験はオンライン形式で実施され、60分間で60問の四肢択一式問題に解答します。受験資格に制限はなく、誰でも挑戦できる開かれた資格です。受験費用は一般が11,000円、学生が5,500円に設定されています。
2026年からは試験開催回数が年3回から年5回に拡大され、2月、4月、6月、8月、10月の各月で受験可能になります。これにより、自分のペースで学習計画を立てやすくなりました。
2026年2月改訂の3つの重要ポイント

新シラバスの改訂は、大きく分けて3つのポイントに集約されます。それぞれの改訂内容を理解することが、効率的な試験対策の第一歩です。
最新モデル・ツールの反映
第一のポイントは、最新のAIモデルとツールに関する内容が大幅に追加されたことです。ChatGPTについては、GPT-o1、GPT-o3、GPT-o4、GPT-4.1、GPT-5といった最新モデルまでの変遷が出題範囲に含まれるようになりました。
さらに、Operatorという新しいAIエージェント機能、Codexというコード生成機能、Image Generationという画像生成機能も追加されています。ChatGPT以外では、GeminiやClaude、Copilotといった主要な生成AIサービスに関する知識も求められます。
画像生成AIや動画生成AIの分野でも、現在主流とされている技術が更新されました。特に動画生成では、自己回帰モデルやVeo3といった最新技術が詳細キーワードに追加されており、技術の進化を反映した出題が予想されます。
RAG・AIエージェントに関する項目の追加
第二のポイントは、実務での活用が広がっているRAGとAIエージェントに関する内容が新たに加わったことです。
RAGは検索拡張生成と呼ばれる技術で、外部データベースから情報を取得してAIの回答精度を高める仕組みです。新シラバスでは、RAGの歴史や発展、具体的な仕組みとメリット、実際のユースケースまで学習範囲に含まれます。チャンクやベクトルデータベースといった技術用語も詳細キーワードとして追加されました。
AIエージェントについては、その概要や仕組み、具体的なツール事例が出題範囲となります。GenSpark、Manus、Skywork AIといった実在のツール名が詳細キーワードに含まれており、実務的な知識が求められる内容です。MCPという外部連携の仕組みについても理解が必要になります。
AI事業者ガイドラインの改訂およびAI新法への対応
第三のポイントは、法制度とガイドラインの更新です。2025年3月28日に改訂された「AI事業者ガイドライン第1.1版」の内容が試験範囲に反映されました。
さらに重要なのが、2025年6月4日に公布されたAI新法への対応です。正式名称は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」といい、AI活用における法的枠組みを定めた重要な法律です。
新シラバスでは、AI新法の必要性や基本構造、具体的な内容、注意すべきリスク、AI事業者ガイドラインとの関連まで、包括的に学習する必要があります。
第1章:AI(人工知能)の出題範囲

第1章では、AIの基礎概念から歴史までを体系的に学びます。この章は生成AIを理解する土台となる部分です。
AIの定義と仕組み
AIの定義では、ダートマス会議から始まるAIの概念を理解します。AIとロボットの区別、ルールベースと機械学習という知能をもたらす2つの仕組みについても学習範囲です。
機械学習の手法としては、教師あり学習、教師なし学習、強化学習、半教師あり学習といった基本的な分類を押さえる必要があります。クラスタリングや次元削減といった具体的な技術用語も出題対象です。
ニューラルネットワークについては、人間の脳の仕組みとの関連や、ニューロン、シナプス、人工ニューロン、重みといった基本用語を理解します。過学習とその対策である正則化やドロップアウト、転移学習といった実践的な概念も含まれます。
AIの種類と歴史
AIの4つのレベルや、弱いAIと強いAIの違いを理解することが求められます。特徴量という概念も重要なキーワードです。
AIの歴史では、第一次AIブームにおける探索と推論、第二次AIブームのエキスパートシステム、そして第三次AIブームを支えたビッグデータについて学びます。各ブームの間にあった「AIの冬」と呼ばれる停滞期についても知識が必要です。
シンギュラリティについては、ヴァーナー・ヴィンジやレイ・カーツワイルといった提唱者の名前とともに、2045年問題として知られる概念を理解します。
第2章:生成AIの出題範囲

第2章は、生成AIの技術的な進化と主要なモデルについて学ぶ章です。2026年改訂で最も内容が充実した部分といえます。
生成モデルの基礎技術
生成モデルの誕生から現在に至るまでの技術的変遷を理解します。ボルツマンマシンや制約付きボルツマンマシンといった初期のモデルから始まり、CNN、VAE、GANといった重要なアーキテクチャを学びます。
CNNでは畳み込みという処理の仕組み、VAEではエンコーダとデコーダの役割や潜在ベクトルの概念、GANでは生成器と識別器の対抗的な学習を理解する必要があります。
RNNとLSTMについては、シーケンスデータを扱う仕組みや、隠れ層とリカレント層の役割を押さえます。
Transformerモデルの革新
生成AIの飛躍的進化を支えたTransformerモデルについて、詳しく学習します。Attention層や自己注意力、位置エンコーディングといった核心的な概念が出題範囲です。
Transformer登場以後の派生モデルとして、GPTモデルとBERTモデルの系譜を理解します。BERTの学習手法であるMLMやNSP、その派生形であるRoBERTaやALBERTも詳細キーワードに含まれます。
ChatGPTの進化
ChatGPTの各バージョンについて、その特徴と進化を学びます。GPT-1における自然言語処理の基礎から、GPT-2でのパラメータ拡大、GPT-3での大規模化、GPT-3.5でのInstructGPTによる改良、GPT-4でのマルチモーダル対応まで、段階的な進化を押さえる必要があります。
2026年改訂で追加された最新モデルとして、GPT-o1、GPT-o3、GPT-o4、GPT-4.1、GPT-5について学習します。さらに、Code Interpreter、GPTs、Sora、Operator、Codex、Image Generationといった機能やサービスも出題範囲に含まれます。
RLHFやアライメント、ファインチューニング、ハルシネーションといった技術用語も重要です。
その他の主要生成AI
ChatGPT以外の主要なサービスとして、Gemini、Claude、Copilotについても概要を理解する必要があります。それぞれの特徴や強みを把握しておくことが求められます。
第3章:現在の生成AIの動向

第3章では、生成AIの現状と最新技術について学びます。2026年改訂で大きく拡充された章です。
生成AIが出来ることと主なサービス
テキスト生成、画像生成、音楽生成、音声生成、動画生成という5つの分野について、それぞれの技術と主要サービスを理解します。
画像生成では、画像のリサイズや正規化、データ拡張技術、リマスタリングといった処理技術が詳細キーワードです。動画生成では、自己回帰モデルやVeo3といった最新技術が追加されました。
ディープフェイク技術
ディープフェイクの危険性について学習します。深層偽造技術の仕組みや、ディスインフォメーションと呼ばれる偽情報による事件例を理解することが求められます。
RAG技術の詳細
2026年改訂で新たに追加されたRAGについて、詳しく学びます。検索拡張生成という日本語訳とともに、その歴史と発展の経緯を押さえる必要があります。
RAGの仕組みでは、チャンクと呼ばれるデータ分割の概念や、ベクトルデータベースの役割を理解します。RAGのメリットとして、回答精度の向上や最新情報への対応が挙げられます。実際のユースケースについても学習範囲です。
AIエージェントの基礎
AIエージェントとは何かという基本概念から始まり、その仕組みについて学びます。GenSpark、Manus、Skywork AIといった具体的なツール事例が詳細キーワードに含まれており、実際のサービスについての知識が求められます。
MCPという外部連携の仕組みについても理解が必要です。MCPはModel Context Protocolの略で、AIエージェントが外部サービスと連携する際の標準的なプロトコルを指します。
第4章:情報リテラシー・基本理念とAI社会原則

第4章は、生成AI活用における倫理や法律、ガバナンスについて学ぶ重要な章です。2026年改訂でAI新法に関する内容が大幅に追加されました。
インターネットリテラシーとセキュリティ
インターネットを適切に利用するための基礎知識として、テクノロジーの理解、情報リテラシー、セキュリティとプライバシー、デジタル市民権について学びます。
フィッシング詐欺の種類として、スミッシングやヴィッシングといった手法を理解します。マルウェアやランサムウェアといった脅威や、ソーシャルエンジニアリング攻撃についても知識が必要です。
スピアフィッシング、ベイト攻撃、ブラックメール、プレテキストといった具体的な攻撃手法が詳細キーワードに含まれます。
個人情報保護の観点
個人情報保護法と改正個人情報保護法について学びます。個人情報保護委員会や個人情報取扱事業者といった関連用語を押さえる必要があります。
個人識別符号、要配慮個人情報、機微情報、匿名加工情報といった法律上の定義を正確に理解することが求められます。マスキングという技術的な対策方法についても学習範囲です。
生成AI活用における個人情報の取り扱いについて、具体的な注意点を理解します。
制作物に関わる権利

知的財産権として、著作権、特許権、商標権、意匠権について学びます。肖像権とパブリシティ権の違いや、不正競争防止法における営業秘密と限定提供データについても理解が必要です。
AI生成物に関する権利の所在や、既存の権利を侵害する可能性、著作権侵害や名誉棄損のリスクについて学習します。
AIを取り巻く理念と原則
AI社会の基本理念として、人間の尊厳が尊重される社会、多様性とインクルージョン、持続可能性という3つの柱を理解します。
AI社会原則では、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティという7つの原則を押さえる必要があります。
AI事業者ガイドラインについては、AIガバナンスの構築として、環境・リスク分析、AIガバナンス・ゴール、AIマネジメントシステムという3つの要素を学びます。AI開発者、AI提供者、AI利用者という3つの主体の役割分担も重要です。
AI新法の詳細
2026年改訂で新たに追加されたAI新法について、包括的に学習します。正式名称は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」です。
AI新法の必要性として、なぜこの法律が制定されたのかという背景を理解します。基本構造では、法律の全体像や構成を把握する必要があります。
AI新法の具体的な内容として、どのような規制や義務が定められているのかを学びます。注意すべき具体的なリスクについても出題範囲です。
AI事業者ガイドラインとの関連では、ガイドラインと法律がどのように連携しているのかを理解します。
第5章:テキスト生成AIのプロンプト制作と実例

第5章は、実務での活用に直結するプロンプトエンジニアリングについて学ぶ章です。実践的なスキルが問われます。
LMとLLM
言語モデルの基礎として、n-gramモデルやニューラル言語モデルを理解します。大規模言語モデルでは、プレトレーニングやハイパーパラメータという概念が重要です。
TemperatureやTop-pといったパラメータの役割について学びます。プロンプトとプロンプトエンジニアリングの定義も押さえる必要があります。
プロンプティングの基礎
プロンプトの構成要素として、Instruction、Context、Input Data、Output Indicatorという4つの要素を理解します。
Zero-Shotプロンプティングと Few-Shotプロンプティングの違いや、それぞれの使い分けを学習します。
LLMプロンプティングの実践
文章の校正や整理、要約といった基本的な活用方法から、箇条書きと文章の相互変換、文章の対象や話者の変更、会話形式への変換まで、様々な実践技法を学びます。
ビジネス応用

メール作成、アンケート項目の作成と分析、キャッチコピー作成、ビジネス書類のテンプレート作成など、実務での具体的な活用例を理解します。
アジェンダの作成、業務手順の分解、タスクの抽出といったプロジェクト管理での活用方法も出題範囲です。
外国語翻訳や英文作成、海外企業宛のメール作成といった国際ビジネスでの活用、ディベートやブレインストーミングといった思考支援の方法についても学びます。
テキスト生成AIの不得意なこと
正確な文字数の指定や複雑な計算、最新情報の取得、芸術作品の批評といった、テキスト生成AIが不得意とする領域を理解します。これらの限界を知ることで、適切な活用判断ができるようになります。
効率的な学習方法と試験対策

新シラバスに対応した効果的な学習方法をご紹介します。
公式テキストと資格更新テスト
生成AIパスポート公式テキスト第4版が、2026年2月の新シラバスに完全対応しています。このテキストを学習の軸とすることをお勧めします。
生成AIパスポート有資格者向けには、資格更新テストが2026年2月1日から開催されます。このテストはeラーニングとチェックテストの形式で、シラバスの改訂内容を中心に出題されます。動画視聴2時間程度とチェックテスト10問で構成され、受講費用は一般6,600円、学生3,300円です。
学習時間の目安
生成AIの知識がない初心者の場合、約30時間の学習が目安となります。公式テキストで基礎知識を約15時間かけて理解し、残りの15時間を問題演習に充てる配分が理想的です。
すでにAI関連の業務経験がある方は、新規追加項目を中心に学習することで、より短時間での合格が可能です。
重点的に学習すべきポイント
2026年改訂で追加された内容は出題される可能性が高いため、特に重点的に学習しましょう。具体的には、最新AIモデル、RAG、AIエージェント、AI新法の4つが重要です。
第4章の法律・倫理に関する内容は暗記だけでなく、なぜその規制が必要なのか、どのようなリスクがあるのかという理解が求められます。
第5章のプロンプティング技法は、実際に手を動かして練習することで理解が深まります。ChatGPTやClaudeなどを使って、シラバスに記載されている活用例を実践してみることをお勧めします。
まとめ

2026年2月からの新シラバスは、生成AI技術の急速な進化を反映した包括的な内容となっています。
最新モデルやRAG、AIエージェント、AI新法といった新しい要素が加わり、より実務に即した知識が求められるようになりました。
試験は年5回に拡大され、受験機会が増えたことで学習計画も立てやすくなっています。公式テキスト第4版を活用し、特に新規追加項目を重点的に学習することで、効率的に合格を目指せます。
生成AIパスポートは、単なる資格取得ではなく、生成AIを安全かつ効果的に活用するための実践的な知識を体系的に学べる貴重な機会です。新シラバスで学んだ知識は、今後のビジネスやキャリアにおいて大きな武器となるでしょう。




